DIYで大丈夫?横浜で検証する防水工事の限界とプロ施工の違い
2025/09/06
ホームセンターで手軽に防水材が購入できる現在、「自分でもできそう」と感じる方は少なくありません。特にベランダの小さな亀裂や雨漏り箇所を見つけたとき、まずはDIYで対処したいというニーズは自然です。しかし、横浜という地域特性を踏まえると、DIY防水は本当に有効と言えるでしょうか。
株式会社テクアートでは、横浜市旭区・青葉区・緑区を中心に多くの防水工事を手がけてきました。その経験から見えてきたのは、DIY防水とプロ施工の間にある技術・品質・保証の大きな差と、横浜特有の環境が建物に与える負荷です。
本記事では、DIYの現実的な限界とプロ施工の具体的な優位性を、横浜の環境条件の文脈でわかりやすく整理します。正しい判断基準を持って、大切な建物を守る最適な選択を見つけましょう。
目次
1. 横浜の環境が防水工事に与える影響
沿岸×都市の二重ストレス
横浜は温暖湿潤気候(Cfa)に属し、沿岸立地ゆえに湿潤・塩分の影響を受けやすい地域です。年平均湿度はおおむね約67%(平年値)、特に6〜10月は月平均で高湿になりがちです。また、都市部ではヒートアイランドにより屋外表面温度が上昇し、夏季日中には屋根面が50〜60℃程度に達し得るため、防水層は熱膨張・収縮の繰り返しにさらされます。
塩害・生物劣化・温度サイクル
• 塩害:海から運ばれる塩化物イオンの付着により、金属部材の腐食促進、コンクリート中性化・鉄筋腐食リスクの増大、シーリング・防水層の劣化促進などが生じやすくなります。
• 生物劣化:高湿条件ではカビ・苔の発生により、表層の劣化や美観低下、滑りリスクが高まります。
• 温度サイクル:熱膨張・収縮の反復で、ひび割れ・端部の開口・接着低下が起きやすくなります。
これらの条件下では、下地の含水状態・材料の耐候性・施工時の気象条件を総合して最適化する専門判断が欠かせません。
2. DIY防水工事の現実的な限界
1) 材料選定の難易度
• 市販の汎用防水材は想定用途と条件が限定的で、温湿度や下地適合を読み解く知識が不可欠です。
• 一部の高性能材料は施工認定や業者流通中心で、DIY向け製品とは設計思想や保証体系が異なります。
• 可使時間(ポットライフ)や塗り重ね間隔は温度・湿度で大きく変動し、仕様厳守が難しくなりがちです。
2) 下地処理と平滑度づくり
防水の耐久性は下地処理で大半が決まります。ここでDIYとプロの差が最も顕在化します。
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処理項目 |
DIYで起こりがちな対応 |
プロの対応 |
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ひび割れ補修 |
表面のシール充填のみ |
原因特定(動く/動かない)→適材適法の補修 |
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不陸・勾配 |
目視で簡易修正 |
水平器/レーザーで精査→樹脂モルタル等で整正 |
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清掃・脱脂 |
水洗い中心 |
高圧洗浄・溶剤脱脂・乾燥管理 |
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プライマー |
簡易塗布/省略 |
下地・材料別の専用プライマーを規定量で施工 |
3) 施工厚み・端部処理・品質管理
• 均一な膜厚確保(ウェットフィルムゲージ/膜厚計)はDIYでは実施が難しく、要所の膜厚不足を招きがち。
• 立上り・入隅・ドレン・貫通部などの難所は、補強クロス・専用部材・多重シールの使い分けが必要。
• 気象管理(一般に気温5℃以上・湿度85%未満など、製品仕様に準拠)や工程内検査を伴う品質管理体制が不可欠です。
見た目が整っていても内部品質が伴わないケースが多く、数ヶ月〜数年で不具合化するリスクがあります。
3. プロの防水工事の技術的優位性
診断→設計→施工→保全の一気通貫
• 建物診断:劣化状況・漏水経路の推定、必要に応じて含水率測定・中性化試験・赤外線サーモ等を活用。
• 工法選定:用途・予算・期待耐用・共用部条件を踏まえ、ウレタン/シート/FRP/通気緩衝などから最適化。
• 材料選定:耐塩性・耐候性・可とう性を満たすシステムで、下地適合と仕様遵守を徹底。
• 品質管理:気象条件に合わせた工程管理、膜厚測定・接着試験、重要部位の補強・多重防水。
• 保証/アフター:材料・施工保証と定期点検で長期保全をサポート。
プロの価値は「塗る技術」だけでなく、診断・設計・保証まで含む総合力にあります。横浜のように外的ストレスが大きい環境では、この総合力が耐久に直結します。
4. 工法別比較:DIYとプロの施工品質格差
ウレタン防水
• DIYでの課題:混合不均一、塗り重ね間隔の逸脱、要所の膜厚不足、下地含水の見落とし。
• プロの優位:機械攪拌で均一混合、通気緩衝工法による含水対策、補強クロスで引張強度向上、工程ごとの膜厚・付着確認。
シート防水(TPO/塩ビ/ゴム等)
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施工項目 |
DIY |
プロ |
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シート接合 |
重ね代不足・圧着ムラ |
熱風溶接/専用接着で確実接合 |
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立上り |
シワ・浮き |
プレス成形・温度管理で安定仕上げ |
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貫通部 |
簡易シールのみ |
専用パッキン+多重シール |
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端部固定 |
接着頼み |
機械的固定併用で荷重分散 |
FRP防水
• DIYでの課題:樹脂/マット比率のバラつき、硬化促進剤の温湿度補正不十分、ゲルタイム管理の難しさ。
• プロの優位:配合・温度管理を数値で統制し、層間の付着と寸法安定を確保。
5. コスト面から見る長期的な考え方
初期費用だけで判断しない
• 費用は工法・面積・立上り長・下地補修量・仮設などで大きく変動します。
• 比較の際は、期待耐用年数・再施工周期・点検/清掃の容易さ・二次被害(内装/構造)リスクまで含めた総保有コストで評価しましょう。
概算を検討する際の考え方(例)
1. m²単価×面積(工法別:密着/通気/シート 等)
2. 下地補修・端部・改修ドレン・仮設などの付帯費
3. 10年スパンの総額=初期施工+(必要に応じた)部分補修/再施工+点検・清掃
4. リスク費用=万一の漏水時の内装復旧/設備交換など
「長持ちしやすい仕様」ほど総額が抑えられるケースも多く、保証・点検体制の有無が費用対効果に効いてきます。
6. DIYが適用可能な範囲とその条件
応急処置として割り切る
DIYを完全に否定はしません。以下のような限定条件では、一時的な応急処置として有効です。 - 局所(目安1㎡以下)の表層ひび割れ・ピンホール補修
- プロ施工までの暫定防水としての止水対策
- 安全確保(ヘルメット・命綱等)、近隣配慮(臭気・汚れ)の徹底
施工環境の最低条件
• 乾燥した天候で連続作業日を確保(目安:数日)
• 製品仕様に準拠(一般に気温5℃以上・湿度85%未満、降雨/結露/強風は回避)
• 下地清掃・乾燥・適合プライマーの実施
プロに任せるべき判断基準
• 10m²以上 or 立上り・入隅・ドレン・貫通部を含む複雑形状
• 居住・設備の直上など漏水時の影響が大きい箇所
• 過去DIYで不具合が出た/下地含水が疑われる場合
7. まとめ
横浜のように湿潤・塩害・温度変化の影響を受けやすい環境では、DIY防水の限界は明確です。表面的な仕上がりだけでは長期耐久は担保しづらく、診断→設計→施工→保全まで統合したプロの総合力が、結果的にコストと安心を両立させます。
株式会社テクアートは、横浜市旭区・青葉区・緑区を中心に、地域環境に最適化した防水ソリューションを提供しています。下地診断から材料選定、難所の納まり、品質管理、長期保証・点検まで、建物を守るためのトータルサービスをご提案します。
防水は建物寿命を左右する投資です。DIYの役割と限界を正しく理解し、建物の将来価値と居住性を見据えた最適解を選びましょう。専門的な診断やセカンドオピニオンが必要な際は、お気軽にご相談ください。

